地主が借地権の売却を認めてくれない場合の対処方法
今回は、借地権譲渡についての地主からの承諾に代わる許可を求める借地権譲渡許可申立事件(借地借家法19条)について、お伝えしたいと思います。
借地人が借地権を譲渡しようと考えた際、地主との話し合いで問題がなければ、下記のような借地権の売却方法が考えられると思います。
①地主に借地権を買い取ってもらう
②第三者へ借地権を売却する
③底地と借地権を同時売却する
④地主と借地権者で等価交換した後、所有権となった土地を売却する
借地権の売却に関する詳細は、下記HPも合わせてご覧ください
借地権て売却できるの?5つの方法についてやさしく解説します。
しかしながら、地主が借地権の売却の話し合いに応じないことがあります。
その場合に借地人が取れる手段に、地主からの承諾に代わる許可を求めて裁判所に申立て(借地非訟)をするという方法があります。
借地非訟は、「非訟」とあるように、「訴訟」ではありません。
とはいえ、申立てにあたっては、申立書を作成し、必要書類も裁判所に提出しなければなりません。
借地権譲渡許可申立事件ですと、借地人の変更により地主に「不利となるおそれがないこと」も要件になりますので、借地権の譲受予定者に関する資料が必要になってきます。
譲受予定者がどういう人物・会社なのか、賃料を支払うだけの資力があるのかなどに関して、住民票や会社の謄本やパンフレット、確定申告書や決算書などを提出する必要があります。
また、申立て後には、地主が借地権を買い取れる機会があります。
その機会を「介入権の行使」と言われていますが、地主は、裁判所から通知を受け取ってから大体3週間以内(もう少し長い場合もあります。)に、借地権を買い戻すか否かの回答(建物及び土地賃借権譲受等の申立て)をしなければなりません。
それから、借地権などの評価や承諾料の金額がよく問題になりますが、これについては、裁判所が選任した鑑定委員会が鑑定を行い、意見書が提出されます。
多少の調整はあるかもしれませんが、鑑定意見書の評価とおりに判断されることがほとんどではないかと思います。
借地権譲渡許可申立事件を含め借地非訟では、和解で終了することも多いですが、裁判所が鑑定結果を踏まえて決定を下すこともあります。
また、申立てを認める決定では、単に借地権の譲渡を許可するだけでなく、付随処分として、借地権の存続期間や賃料額などの借地条件が変更されることがあります。
なお、借地権そのものが争われている場合(例えば、借地契約期間が残り1年で更新が見込めない場合など)には、借地非訟事件の申立を裁判所で却下される可能性があります。
これは、借地非訟では、借地権がちゃんと存在していることが前提になっているからです。
事前の話し合いで解決ができればいいのですが、地主が話し合いに応じない場合には、借地非訟を視野に入れて考えていかなくてはいけないだろうと思います。
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