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建物譲渡特約付借地権とは?30年後のリスクとメリット

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建物譲渡特約付借地権とは?30年後のリスクとメリット

相続した土地の管理方法を検討している際、ハウスメーカーから「建物譲渡特約付借地権」を活用した賃貸経営を勧められるケースがあります。

建物譲渡特約付借地権は、借地人が土地に建物を建て、30年後(30年以上も可)に地主が建物を買い取る、という契約です。「将来の解体費がかからない」「30年後はオーナーとしてアパート経営で収入が得られる」といった話を持ち掛けられる例も聞かれます。

メリットが多いように感じますが、実際には、

  • 30年後にいくらで買い取るのか分からない
  • 引き続き居住したい住人がいる場合、アパートやマンションの管理人になる必要がある
  • 建物に入居者がいる間は、解体したくてもできない
  • 修繕費の負担や入居者トラブルの対応が求められる
  • アパート経営後に解体する場合は別に費用が発生する

といった問題に直面する場合があります。

建物譲渡特約付借地権は「借地借家法24条」により、「相当の対価」での建物譲渡が前提です。そのため、建物に客観的な価値が残っているにもかかわらず、はじめから0円での無償譲渡を選ぶ契約は、制度の要件や税務の面で問題が生じる可能性があります。

0円譲渡を選択する場合、固定資産税の評価額や不動産鑑定評価額、残存耐用年数、収益性などを踏まえた算定方法を契約時に定め、契約前に税理士へ試算を依頼しておく必要があります。地主の立場が個人か法人かによって、税目や税額が変わる点にも注意が必要です。

今回は、30年後のリスクやメリット・デメリット、覚えておくべき法的ルール、後悔しないためのチェックポイントについて、くわしく解説します。

建物譲渡特約付借地権とは?

建物譲渡特約付借地権とは?

建物譲渡特約付借地権とは、30年以上土地を貸した後、最終的に建物を地主が買い取ることで借地関係を終了させる契約です。地代収入と将来の資産確保を両立できる、という特徴があります。

一般定期借地権(借地借家法第22条)や事業用定期借地権(同法第23条)では、建物譲渡により借地権が消滅した後、借地人が建物を解体し、更地にして土地を返却するのが原則です。

ですが、建物譲渡特約付借地権契約の場合は、地主が建物を取得すると同時に、借地権が消滅します。契約期間中は地代収入が得られ、建物譲渡特約に基づく譲渡時は建物を活用できる点が特徴です。

30年後の建物の「相当の対価」について、計算式などの決まりはありません。当事者間の協議で決定するため、金額面でトラブルが起きるケースがみられます。

また契約の際、ハウスメーカーから「30年間のアパート経営収入を得るのが目的だから、譲渡時の建物買い取り額は0円で大丈夫です」と言われる場合もあります。

「0円なら」と契約を交わしたくなりますが、建物に価値が残っている場合、時価にたいしての税金が発生するため、思いがけない出費になる恐れがあります。

その他にも、建物を維持するための修繕費、建物がボロボロの場合は解体費などがかかる可能性があります。30年後にどのような費用が発生するのか、事前の確認が大切です。

建物譲渡後も住み続けられる?『賃貸借契約』への切り替えルール

建物譲渡後も住み続けられる?賃貸借契約への切り替えルール

借地権付き建物は入居者が希望していて、譲渡後に請求があった場合、法定賃貸借が成立します。

「契約後に残された建物を人に貸して、将来は家賃収入を得たい」という場合、建物譲渡特約付借地権の契約を有意義に活用できます。ですが、建物を買い取った後、更地にする予定がある、という場合は注意が必要です。

入居者が、借地借家法第24条第2項をもとに、地主に対して所定の請求をした場合、入居者と地主との間で期間の定めがない建物賃貸借が成立したもの、とみなされます。

つまり、入居者から請求があれば、地主の希望にかかわらず大家として管理義務を負うことになります。

正当な事由がなければ、契約を終了できず「建物を取り戻したつもりが、半永久的に大家を続けなければならない」という事態にもなる恐れがあります。

入居者が住んでいる限り解体できず、入居者数が少ないケースでは、家賃収入よりも固定資産税や修繕費の方が高額になってしまう恐れもあります。

このように、建物譲渡特約付借地権は、出口戦略を立てづらい契約形態である点を、覚えておきましょう。

年齢によっては大家業の継続が厳しい場合も

借地権付き建物を相続した年齢が50代、60代で、そこから建物譲渡特約の契約を交わした場合、満了を迎える30年後は80代、90代です。

この、後期高齢者と呼ばれる年代になってから、大家の仕事を引き継ぎ、全うするのは簡単ではありません。

自分が入居を認めたわけではない、見知らぬ住人との間にトラブルが起きたり、すでにトラブルが起きていたり、というケースも考えられます。

住み続けたい入居者がいる場合、自分だけでなく、入居者との賃貸借契約が子へも相続されます。建ってから30年という年月で劣化した、建物の修繕費が高額になる可能性もあり、年齢や体力も考慮した、慎重な判断が必要です。

このような事態を避けるために、契約の時点であらかじめ同条第3項に基づき、定期建物賃貸借特約が締結されている場合もあります。

定期建物賃貸借特約が締結されている場合、建物譲渡特約に基づく譲渡のタイミングで賃貸借契約が終了し、その後は更新されない、という取り決めが優先されるため、要件を満たせば、普通借家より出口設計がしやすくなります。

ただし、定期建物賃貸借特約を有効に扱うには、借地借家法38条に基づく書面による契約、更新がない旨の事前説明(書面交付)、期間満了前の終了通知など、所定の要件を満たす必要があります。形式を誤ると、通常の建物賃貸借として扱われるリスクがあるため、契約書作成時に専門家の確認を受けておくと安心です。

知らないと損をする? 建物譲渡特約付借地権のメリット・デメリット

建物譲渡特約付借地権のメリット・デメリット

ハウスメーカーが勧める建物譲渡特約付借地権の提案には、地主側のメリットが強調されがちです。しかし、契約形態の特性上、地主側が不利になる点が十分に説明されないまま、進むケースも存在しています。

内容を正しく理解しないまま契約してしまうと、後悔する結果になってしまう恐れがあります。建物譲渡特約付借地権のメリット・デメリットを正しく知った上で、判断しましょう。

建物譲渡特約付借地権契約のメリット・デメリット

メリット デメリット
地主 借地契約で地代を30年受け取った後、建物譲渡特約に基づく譲渡時に、収益物件(アパートなど)が手に入る可能性がある。 更地にする場合、解体費が発生する。建物の管理責任を引き継いだ結果、大規模修繕費や入居者トラブルを抱える恐れがある。買取費用や税金の支払いが必要。
借地人(ハウスメーカーなど) 初期投資(土地代)を抑え、アパート経営ができる。大規模修繕の実施前に建物譲渡特約に基づく譲渡ができる。 30年後には建物を手放さなければならない。

建物譲渡特約付借地権契約のメリット

ハウスメーカーなどの借地人は、建物が老朽化する30年後を目安に建物を手放せるため、土地代への初期投資や将来の大規模修繕費が不要になります。コストを大幅に抑えた賃貸物件経営ができる点がメリットです。

一方の地主は、建物が残る建物譲渡特約付借地権の契約で、譲渡後にアパート経営を続けられ、30年以上が経ち地代が得られなくなった後は、家賃収入が得られるというメリットがあります。

建物譲渡特約付借地権契約のデメリット

ハウスメーカー側は、できるだけコストを抑えて、30年程度の建物経営収益が得られれば良い、と考えている場合、大きなデメリットはありません。

地主側は、契約内容によっては建物を相場で買い取る必要があります。新しく建物を建てたい場合、更地にしたくなった場合は、解体費が発生する点がデメリットです。

大家として建物を引き継ぐ場合はさらに、管理責任や修繕費の支出、入居者トラブルといった問題を抱える恐れがあります。

建物を買い取り、「地主」から「アパートのオーナー(大家)」へ立場が変わると、大規模修繕を実施する責任も負います。建物の規模・構造により周期は異なりますが、一般的に15年程度ごとに数百万円〜千万円単位の大規模修繕費が発生する、というケースが珍しくありません。

借地人と比較すると、地主側はメリット以上にデメリットが大きくなる可能性があります。30年後の建物の状態や需要によっては、入居者の募集が困難になるケースもある、という点も頭に入れて、契約するかどうか検討を進めましょう。

一般定期借地権と建物譲渡特約付借地権の違い

ハウスメーカーと借地権付きの契約を結ぶ場合、一般定期借地権と建物譲渡特約付借地権のいずれかを選びます。借地権契約を検討している場合は、中身がどう違うのかを知った上で、自分に合った契約を選びましょう。

建物譲渡特約付借地権 一般定期借地権
契約期間 30年以上 50年以上
契約満了時の建物 相当の時価で地主が建物を買い取る 更地にして地主に返す
解体費用を負担する人 地主(将来壊す場合は必要) 借地人(必ず負担)
建物譲渡特約に基づく譲渡時のリスク 相場での買取
大家としての管理責任
大規模修繕費の負担
建物の状態が良い場合でも、引き継ぎはできない

建物譲渡特約付借地権は建物譲渡特約に基づく譲渡時、状態の良い建物や、多くの住人が残された建物を買い取れた場合、その後も安定した家賃収入を得られる可能性があります。

一方で、今後も建物に住みたい入居者がいない、買取相場が高額過ぎる、入居者トラブルが起きている、早期の大規模修繕が必要、といった場合は、大家としての負担が大きくなります。

一般定期借地権の場合、受け取れるお金は地代だけですが、安定した収入を50年以上受け取ることができ、最後は更地にした状態で返還されます。

建物を活用した賃貸経営はできませんが、更地だけのため売却しやすい、相続した人間が大家になって管理する必要がない、というメリットがあります。

借地権の売却については下記記事で詳しく記載しておりますので、あわせてご確認ください。

【宅建士監修】借地権付きの土地・建物を高く売る方法|相場・税金・売却の流れを徹底解説

『相当の対価』はいくら? 時価算定のトラブルを防ぐ方法

相当の対価はいくら?時価算定のトラブルを防ぐ方法

結論から言うと「相当の対価」に一律の相場や計算式は存在しません。 法律上の規定がないため、30年後の建物状態やその時の市場環境に基づき、当事者間で協議して決めるのが原則です。

この曖昧さが原因で、地主側は100万円程度と考えていたのに、ハウスメーカーから「1,000万円が妥当」だと主張されるような価格トラブルが後を絶ちません。

トラブルを未然に防ぐ「算定ルール」の明文化

「相当の対価」という言葉の解釈で揉めないように、契約時点で以下のいずれかの算定式を公正証書に明記しておくことが実務上の鉄則です。

  • 固定資産税評価額 × 〇%
  • 再調達原価(同等の建物を再建する費用)に基づいた算定額

また、買取金額だけでなく、30年後の名義変更を確実に行うために「所有権移転請求権の仮登記」もセットで実施しましょう。これにより、借地人の倒産や建物の無断転売といったリスクから地主の権利を守れます。

「0円譲渡(無償)」なら安心という誤解

ハウスメーカーから「買取額は0円でいい」と提案されるケースもありますが、「支払いが0円=税金も0円」ではありません。

建物に価値が残っている場合、0円で譲り受けると「時価相当額をプレゼントされた」とみなされ、贈与税や所得税、法人税が課せられる場合があります。

譲渡人 譲受人 譲渡人側の課税 譲受人側の課税
個人 個人 原則課税なし
(低額譲渡で時価1/2未満の場合は譲渡所得の特例あり)
時価相当額への贈与税
個人 法人 時価でのみなし譲渡所得(所得税法59条) 受贈益(法人税)
法人 個人 時価での寄附金または役員等への給与認定 一時所得または給与所得(所得税)
法人 法人 時価での寄附金課税 受贈益(法人税)

その他にも、不動産取得税や登録免許税の支払いが生じる場合があります。

「無償譲渡を選んだせいで、時価で買い取るよりも税負担が重くなった」という本末転倒な事態を避けるためにも、契約前に税理士へ、かならず試算を依頼してください。

ハウスメーカーの提案を鵜呑みにしない! 契約前に確認すべき3つの質問

契約前に確認すべき3つの質問

建物譲渡特約付借地権の契約を地主優位で進めるなら、ハウスメーカー側の提案を鵜吞みにしない話し合いが重要です。30年後に後悔しないために、次の3つの質問を実施して、明確な答えを得ておきましょう。

  1. 「30年後の『相当の対価』は、どのように算出する予定ですか?」
  2. 「30年間の『修繕履歴』を、すべて開示・引き継いでもらえますか?」
  3. 「30年後の『賃貸借契約の切り替え条件』は決まっていますか?」

質問1:「30年後の『相当の対価』は、どのように算出する予定ですか?」

相当の対価について定義せず、その時の時価で計算するという契約にした場合、ハウスメーカーと地主との間で、裁判トラブルになる可能性があります。その時の相場、という曖昧な基準ではなく、固定資産税評価額の〇%、再調達原価法に基づく計算式など、契約書に明記できる形で決定しましょう。

0円譲渡の場合、地主側には当事者の属性に応じて贈与税・所得税・受贈益課税などが発生する可能性があります。これらの税額が高額になる場合に備えて、ハウスメーカー側に費用負担を求められるかどうか、契約段階で取り決めておくと安心です。

質問2:「30年間の『修繕履歴』を、すべて開示・引き継いでもらえますか?」

30年後に建物を引き取る際、地主は建物が抱える問題も併せて受け取ることになります。健全な物件運営を実現するためにも、ハウスメーカーがいつ、どのような修繕を実施してきたのか、記録として受け取れるように、契約書の内容へ含めておきましょう。

ボロボロの状態で引き受けることがないように、どのタイミングで修繕を行うのか、契約の際に定めておくと、良い状態で建物を引き継げます。契約から20~25年くらいのタイミングで、大規模修繕を実施した上で地主へ引き渡す、といった契約ができると、より価値ある状態で建物を運営できます。

質問3:「30年後の『賃貸借契約の切り替え条件』は決まっていますか?」

建物を引き取った後に賃貸経営をする場合、地主から大家という立場に変わり、入居者との契約を引き継ぎます。入居者の安心のためにも、スムーズに賃貸経営を進めるためにも、ハウスメーカーと賃貸借契約の切り替え条件を定めておく必要があります。

家賃設定や敷金についての取り決め、未払いの賃料があるかどうか、クレームの履歴、問題がある場合は誰がどのように対処するのか、という条件を決めておきましょう。

年齢的に賃貸経営が難しそうだという場合、ハウスメーカーへ手数料や管理費を支払い、引き続き管理を委託する、という方法もあります。

双方の合意が得られる場合は、30年後は○○円の委託料で管理を継続する、という文言を加えておくと、大家としての負担を軽減できます。

30年後のトラブルを防ぐために~借地権の専門家へ相談すべき理由

ハウスメーカーからの提案は、家のプロによる契約だから安心、そんな風に考えがちです。ですが、契約書の内容によっては、30年後に大きな後悔や金銭的負担が生じてしまう恐れがあります。

ハウスメーカー側だけが得になる契約ではなく、地主側にもメリットのある契約になっているかどうか、将来の資産を守るためにも、第三者によるリーガルチェックが重要です。

建物譲渡特約付借地権の契約は、特殊な契約のため、時価の定義や建物の取り扱い、税務対策など、地主目線で細かい部分まで精査してもらえる、専門家とタッグを組んで、話し合いを進めていくと安心です。決定した内容は公正証書として残しておきましょう。

建物譲渡特約付借地権は「出口戦略」の設計がすべて

建物譲渡特約付借地権は出口戦略の設計がすべて

建物譲渡特約付借地権の提案は「将来アパートの大家になれる」「賃貸として経営できるから解体費がかからない」といった魅力に目が行きがちです。

しかし、30年後の建物に家賃収益が得られるほどの価値があるかどうか、建物がボロボロの状態で返されてしまったら、解体するしかなくなるのではないか、といった負の部分にも目を向けておく必要があります。

また相当の対価や0円譲渡といった部分をあいまいにしてしまうと、30年後の買取金額が高額になってしまったり、思いがけない税金が発生したりする可能性があります。

契約を進める際は、30年後にどのくらいの金額で買い取りたいのか、いくらくらいの収益を得たいのか、という未来を見据えた「出口戦略」の設計が重要です。

新青土地コーポレーションは、底地・借地権問題に長年取り組んできた不動産会社として、これまで多くの建物譲渡特約付借地権に関するご相談に携わって参りました。

論点整理や資料の準備、相場感に基づく検討材料の提供だけでなく、必要に応じて弁護士・税理士・司法書士など各分野の専門家と連携し、契約内容の確認やリスクの洗い出し等の対応が可能です。

相続した土地の建物譲渡特約付借地権についてお悩みでしたら、まずはお気軽にご相談ください。現在の土地の状況、将来の出口戦略、契約条件の検討など、地主様の立場に立ってていねいにサポートいたします。

監修者

川瀬崇弘

川瀬崇弘

宅地建物取引士 / 不動産コンサルティングマスター / 相続対策専門士

司法書士事務所にて補助者として不動産登記、破産申立、過払い金返還請求等の実務に従事。その後、不動産会社で不動産売買仲介営業を担当。以降は、大手ハウスメーカーにて注文住宅の営業、建売用地の仕入(情報収集~企画~販売)を一貫して担当。

特に法律の知識を活かした借地権に関するコンサルティングを強みとし、権利関係・リスク・双方の主張を整理した提案で案件を推進。さらに会社整理に伴う資産処分では、会計士と連携しながらスキーム検討、関係者調整、売却実務までを担当。

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