相続した建物が、地主から借りた土地に建てられた借地権物件の場合、土地とセットでの売却が難しく、相続人の頭を悩ませがちです。
借地権や借地権物件であっても、地主や第三者へ売却可能です。
しかし、自分では金額の計算が難しい。売却相場が分からない、地主との面識が薄い、といった問題を抱えていたり、WebやSNSなどで「借地権は安く買い叩かれる場合が多い」という話を耳にしたりして、不安に感じているかもしれません。
借地権を少しでも高く、安心して売却するなら、手残り金額を最大化する計算式と交渉術が必要です。
今回は、相続した借地権物件を、納得のいく価格で売却できるように、覚えておくべき相場や正しい計算方法、交渉戦術を解説いたします。
借地権の売却相場は「売り先」で1.5倍変わる
借地権の売却相場は、誰に売るのかによって変わります。相手によって、相場価格が1.5倍に増える場合もあるため、売り先に違う金額相場を、事前にチェックしておきましょう。
地主に買い取ってもらう(更地価格の40%〜60%)
借地権を地主に買い取ってもらう場合、相場は更地価格の40%〜60%です。価格はそれほど高くありませんが、譲渡承諾料が不要になる、というメリットがあります。
第三者に買い取ってもらう場合、地主に名義変更の許可を得るため、譲渡承諾料を支払うのが一般的です。しかし、地主本人に買い取ってもらう場合は、借地権を返すだけの手続きになるため、名義変更の必要がありません。
譲渡承諾料は抑えられますが、買取価格が地主優位の金額になりやすく「個人間で交渉した結果、安く見積もられてしまった」というケースがみられます。
第三者に一般売却する(更地価格の60%〜70%)
借地権を、不動産買取業者や近隣住民、家を建てたい個人などの第三者に売却する場合の相場は、更地価格の60%〜70%です。いわゆる市場価格に近い価格での売却が望めますが、地主による買取ではないため、譲渡承諾料の支払いが別途必要になります。
希望する価格で売却するために、見積価格から譲渡承諾料を引いた金額を、あらかじめ計算しておくと安心です。
底地と「セット売却」する(更地価格の100%を目指す)
借地権だけを売却する場合、地主の許可が必要だったり、ローンを組みにくかったり、といったデメリットがあり、買い手がつかない場合があります。そこで検討したいのが、地主の底地と合わせて、更地価格の100%に近い金額で、セット売却を目指す方法です。
相続人にも地主にも、メリットが大きい方法ですが、地主との面識がない場合、話し合いが難航するケースが考えられます。セットでの売却を検討したい場合は、借地権取引にくわしい専門家に間に入ってもらうと、スムーズに交渉・売買を進められます。
借地権の「本当の価値」を出す計算方法3ステップ
借地権をできるだけ高く売るなら、相続した借地権にはどのくらいの価値があるのか、事前に計算しておく必要があります。今すぐ手元でできる計算方法を、3つのステップで解説いたします。
ステップ①:路線価図で「借地権割合」を調べる
まずは国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」にアクセスして、「都道府県」→「路線価図」→「市区町村」→「町名」を選びます。
次に、町名の中から、相続した家があるエリアの地図を探し、自宅が面している道路に書かれている数字とアルファベットをチェックしてください。
数字は、1平米あたりの単価を表しています。千円単位で記されているため、300と書かれている場合は30万円になります。
アルファベットは、借地権の割合を表しています。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
この数字とアルファベットをメモしたら、ステップ②へ進みましょう。
ステップ②:相続税評価額から「実勢価格(時価)」へ補正する
相続した土地の金額を計算するにあたり、最初にステップ①で調べた1平米あたりの路線価格×土地の広さ(平米)で、相続税評価額を算出します。
このとき注意したいのが、「路線価図の金額は、時価の8割である」という点です。実勢価格(時価)とは差があるため、算出した相続税評価額に1.1〜1.2をかけて、正しい市場価格を計算しておく必要があります。
実勢価格を算出できたら、路線価のアルファベットに対応しているパーセンテージをかけると、借地権の金額を計算できます。
ステップ③:建物の価値(築年数)の加味
ステップ②で借地権の実勢価格を計算しましたが、その土地に建てられている建物の築年数による減価償却、リフォームの有無などによって、さらに金額が変わります。家屋がボロボロの場合は、解体費の検討も必要です。
築年数20年以内であれば、まだ価値が残されていると判断されるケースが多いでしょう。リフォーム済みの場合は、さらに査定額がアップします。
逆に、築年数が30年以上経っている場合、建物の価値はゼロに等しくなります。住める状態であれば、家付きで売却できる場合もありますが、プラス査定はまず得られません。まだ住める状態でも、デザインや建物の内外装の状態によって、解体を求められるケースもあります。
家屋がすでにボロボロの場合は、更地してから売却するため、解体費が発生します。解体費については次の4大経費の部分で、木造・RCそれぞれの坪単価目安、計算方法を解説しています。合わせて参考にしてみてください。
【借地権相場の計算式まとめ】
①実勢価格の計算
②プラスマイナス査定の計算
建物の査定は、状態によって一軒一軒の評価が大きく変わります。実際の価格は、借地権買取に強い見積もりを依頼して、たしかめてみてください。
額面より重要!相場から差し引かれる「4大経費」
借地権の売却金は、すべてが自分の手元に入るわけではありません。譲渡承諾料や解体費、仲介手数料、税金など、さまざまな経費が、売却金額から差し引かれます。どのような経費がかかるのか、実際の金額と計算方法をおぼえておきましょう。
地主への「名義書換料(譲渡承諾料)」
借地権を第三者へ売却する場合、地主による名義書換料として、譲渡承諾料が発生します。譲渡承諾料の目安は、借地権価格の10%です。
建物の「解体費用」
建物の解体が必要な場合、家屋が木造の場合、RC造の場合で金額が変わります。
木造の場合は坪単価×3~5万円、RC造の場合は坪単価×6~7万円が目安です。
相続した建物が約30坪の場合、木造の場合は約90~150万円、RC造の場合は約180~240万円の解体費用がかかります。
仲介手数料と印紙税
借地権を第三者に売却する場合、仲介手数料と印紙税の支払いが必要です。
手数料の上限は法律で定められており、計算には「(3% + 6万円)×消費税」の速算式が用いられます。
借地権を2000万円で売る場合、(2,000万円×3%+6万円)×1.1(消費税)という計算になり、72.6万円の仲介手数料が必要です。仲介手数料には、買い手探しや書類作成、地主との交渉、登記手続きなどのサポートが含まれています。
仲介手数料とは別にかかる印紙税は、売買契約書に記された契約金額によって変わります。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(令和9年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 100万円~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円~1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円~5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
令和9年3月31日までに売買契約をすると、軽減税率が適用されるため、印紙税の支出を抑えられます。
譲渡所得税
借地権を売却して得た利益には、住民税や所得税といった譲渡所得税が課せられます。建物の所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)、5年以上の場合(長期譲渡所得)によって、支払うべき税金の金額が変わります。
このように、借地権の売却には「所有期間5年の壁」があります。一見すると、長期所有してから売却する方が得に感じますが、借地権付き建物(居住用財産)として売却する場合、3,000万円の特別控除が受けられます。
利益は、売却金額-(借地権や建物の購入金額+経費)で計算します。そのため、借地権物件の売却利益が3,000万円以下になるケースが多く、短期譲渡所得であっても、税金の支払いをゼロにできるケースが多くみられます。
3,000万円の特別控除を受けられるかどうか。現在の建物の価値を検討すると、5年以内と5年以上のどちらで売却するのが正解なのか、事前に借地権買取業者へ相談しておくと、最善のタイミングを選べます。
税理士事務所を併設もしくは提携している借地権買取業者であれば、節税面でのメリットが得られます。業者選びの際は、税理士のサポートが受けられるかどうか、という点もたしかめておくと安心です。
安く買いたたかれないための交渉戦術
借地権を地主や第三者に売却する場合、正しい知識を持っていないと、安く買いたたかれてしまう可能性があります。相続した借地権を賢く売るために、3つの交渉戦術を覚えておきましょう。
地主に話す「前」にプロに相談する
地主への売却を予定している場合、直接地主を訪ねて、買取交渉をしてしまいがちです。しかし、相場や交渉の知識が不足している場合、地主側が有利になるように、上手に話を持っていかれてしまう可能性があります。
借地権買取業者の多くが、借地権の売買だけでなく、地主との交渉手続きに対応しています。地主に「売りたい」と個人で申し出る前に、借地権売買にくわしいプロへ相談して、戦略を立てておきましょう。
相談・交渉手数料を差し引いても、売却金額が大きくなるケースが多いこと。税理士事務所を併設・提携している場合は、節税にもつながること。気が重くなりがちな地主との直接交渉を避けられること、といったメリットが待っています。
建物買取請求権を「正しく」理解する
借地権の売買は、地主側に権限があると思われがちですが、借地人側にも「借地権を買い取ってほしい」という請求ができる「建物買取請求権」という権利があります。この権利を上手に活用すると、最善の時期に売却を目指せます。
相続した借地権や物件の売却に、もっとも適しているのは、借地権契約を更新するタイミングです。
地主が更新を渋っている場合「更新ができないなら建物の買取をお願いしたい」という形で話を進めると、新しい借地人相手の契約更新になるため、契約期間が長くなり、買い手がつきやすくなります。
地主側も、建物を買い取ることなく、譲渡承諾料が受け取れるというメリットがあるため、話がスムーズに進みやすいでしょう。
地主が拒否した時の「借地非訟(ひしょう)」
借地権の売却や更新のタイミングでの建物売却を検討しているけれど、地主が拒否しているという場合、「借地非訟(しゃくちひしょう)」という法的手段があります。
借地非訟を裁判で申し立てると、地主に変わり裁判所の許可のもと、相続した借地権の売却が可能になります。地主が厳しい態度で、なかなか首を縦に振ってくれない、という場合は、法の力を武器に、対等な立場での交渉を進めましょう。
いきなり裁判になるのは抵抗がある、という場合は、交渉の専門家にまず相談してみてください。借地権売買のプロは、地主さんの気持ちに寄り添いながら、円満な交渉を目指してくれます。それでも無理な場合は「借地非訟」という切り札が役に立ちます。
関連記事;借地非訟について
まとめ
相続した借地権の売却は、ただ金額を計算すれば良い、というだけではありません。誰に売るのか、どのタイミングで話を切り出すのか、もっとも高く売却するにはどうすれば良いのか、といった税務や法務の知識、交渉力が重要です。
- 地主との直接交渉に不安がある
- 結局いくらで売却すれば良いのか分からない
- 借地権売却後の手残り金額をできるだけ増やしたい
- 路線価図や更新時期、建物の状態を加味した売却金額が知りたい
それなら、借地権相談・交渉のプロである新青土地コーポレーションにおまかせください。地主も借地権者も笑顔になれるゴールを目指し、売却完了まで伴走いたします。
新青土地コーポレーションは、一つのオフィスに不動産コンサルタント、税理士、司法書士、公認会計士が在籍しています。地主との交渉から節税面の的確なアドバイスまで、ワンストップでご相談いただけるという点が、私たちの強みです。
借地権に関連するご相談・お見積もりは無料です。相続した借地権、借地権物件の取り扱いで困ったら、東京都杉並区の新青土地コーポレーションにおまかせください。

