
「借地権付き建物を相続したけれど、自分の持ち家があるから売却したい」
そう考え、地元の不動産会社に相談したけれど、「借地権は買い手がつきにくい」と言われてしまった。どうすれば良いのか分からず頭を悩ませている。
借地権付き建物を相続すると、このような悩みを抱えるケースが少なくありません。
地主から「他人に売るなら、更地にして返して」という無理難題を言われる場合もあり、売ることができない、更地にするには解体費がかかりすぎる、かといってこのままでは地代や税金を支払い続けなければいけない、といった苦しい立場に置かれる例もあります。
借地権付き建物についての知識が少ない場合、「どこも買ってくれない」「地主の言いなりになるしかない」と諦めてしまいがちです。ですが、不動産会社に拒否されたり、地主が反対していたり、という状態でも打開策が残されている場合があります。
今回は借地権付きの建物が売れない、買ってはいけないと言われる理由と、戦略的に売却を目指す方法や手数料の相場、地主の許可が得られない場合の対処法について、くわしく解説いたします。
できるだけ損をしない対処法を知り、心に重くのしかかる相続の悩みや不安を解決しましょう。
※本記事では、一般的な相続実務で多い「土地賃借権型の借地権」を前提に解説いたします。地上権や特殊な契約内容の場合は、地主の承諾の要否や手続きが異なる場合があります。
なぜ借地権付き建物は「売れない」と門前払いされるのか?

借地権付きの建物は売れないと言われがちです。なぜ一般的な不動産会社が、借地権付き建物の買取を敬遠するのか、まずは4つの構造的要因を知っておきましょう。
借地権付き建物が売れない理由 1:自由に売却・増改築できない
借地権付きの建物は一般的な住宅と違い、大規模なリフォーム、増改築の際に、地主の承諾や裁判所の許可が必要になる場合があります。自分が該当するかどうかは、契約時の承諾条項を確認してみてください。
また、リフォームや増改築が自由にできないだけでなく、不要になったタイミングでの売却も、借地人の一存ではできません。
売却を目指す場合、誰に売るのか、という点についても、地主への相談が必須です。新しい借地人は、地主の新しいパートナーとなるため、信頼できる人でなければ認めてもらえないからです。
相手が見つかった場合も、地主へ支払う承諾料の支払いが発生します。承諾料の金額は、個々の事情により異なりますが、売却価格にたいして10%程度が目安です。
建物から引っ越したい、売却したいと考えているけれど、地主の許可が得られない場合、建物が売れないまま、地代の支払いだけが続いてしまう恐れがあります。地主との関係性があまり良くない場合は、さらに売却のハードルが上がってしまいます。
借地権付き建物が売れない理由 2:地代や承諾料などのコストがかかる
借地権付きの建物は、地主に土地を借りて建てられた物件です。この土地の借地料として、建物を所有している間は、地代の支払いが発生します。
買い取った建物が売れない場合、不動産会社が地代を払い続けることになります。また買取後、新しい借地人へ販売する場合も、地主へ支払う承諾料が必要です。
地代や承諾料だけでなく、固定資産税を支払うケースもあります。建物代は安価でも、その他の支払いが高額になる場合が多く、買取を断られてしまいます。
借地権付き建物が売れない理由 3:地主とトラブルになる可能性がある
借地権付きの建物は、地主との良好な関係作りが欠かせません。地代を遅れることなく支払うのはもちろん、近隣に住んでいる場合は挨拶を欠かさなかったり、年始の挨拶に手土産を持って伺ったり、といった交流が求められるケースがあり、敬遠されがちです。
地主の機嫌を損ねてしまうと、実施したいリフォームができなかったり、売却したいけれど反対されたり、地代の増額を求められたり、といったトラブルにつながる恐れがあります。
このような問題を未然に防ぐために、借地権付きの建物は購入しない、と決めている不動産会社もあります。
借地権付き建物が売れない理由 4:住宅ローンの審査が厳しい
家を購入する場合、住宅ローンを利用する方がほとんどです。住宅ローンを希望する場合、金融機関による審査が実施されますが、借地権付きの建物は土地を担保にできません。
土地を担保にできないと、ローンの支払いが滞ったときに、簡単に差し押さえできないため、借地権付き建物は審査に通りにくい、というデメリットがあります。
「購入希望者はいるけれど、住宅ローンが組めず、購入できない」という事態を避けるために「借地権付きの建物は買ってはいけない」と考える不動産会社が少なくありません。
借地権の売却については下記記事で詳しく記載しておりますので、あわせてご確認ください。
【宅建士監修】借地権付きの土地・建物を高く売る方法|相場・税金・売却の流れを徹底解説
【状況別】借地権付き建物の売却可能性をアップする3つの出口戦略

相続した借地権付き建物の地代の支払いや管理から解放されるなら、入念な出口戦略が必要です。確実に手放すために、今何をするべきなのか、3つの戦略をみてみましょう。
戦略①:地主に借地権を買い取ってもらう
借地権付き建物を手放すなら、まずは地主による借地権買取を検討してみてください。地主が借地権を得ると、土地が完全所有権化され、今後は自由に利用できる、という点がメリットです。
借地人も、地主が直接買い取るため、第三者へ販売する際とは違い、承諾料が発生しないという利点があります。
地主が土地を自由に活用するために「建物を解体し、更地にするのが条件」だと言われる場合があります。しかし、解体費用を支払ったとしても、地代を払い続けるよりは、将来的な負担を減らせるケースがほとんどです。
建物の解体費、地代を払い続けた場合の費用を計算しておくと、地主との交渉をスムーズに進められます。
戦略②:地主と協力して「底地」とセットで第三者に売却する
借地権付き建物は売るのが難しい、そう考えているのは地主も同じです。このような場合、借地人が保有している借地権と、地主が保有している底地をセットにして、市場に応じた価格での売却を目指す「同時売却」という手段を選ぶ場合があります。
地主側も、土地を手放したいと考えている、少しでも高く売りたいという希望がある、という場合は、同時売却で進められないか、相談してみてください。
同時売却を選択する場合は、売却益をどのように分配するのか、という点を事前に決めておくと、お金にまつわるトラブルを未然に防げます。
戦略③:借地権に強い「専門買取業者」に直接売却する
借地権の売買は、地主が話し合いに応じてくれない、借地権付き建物だから売れないと不動産会社に言われてしまった、といった問題に直面しがちです。
難しいと言われる借地権付き建物を、できるだけ速やかに、確実に売却するなら、借地権に強い専門買取業者への直接売却が近道です。
借地権に強い専門業者を選ぶと、不動産取引としての価格調整や売却スキームの提案を受けられる場合があります。
ただし、地主との間で法的紛争性が高い交渉や、借地非訟を見据えた法的対応が必要な場合は、弁護士が対応する必要があります。そのため、弁護士と適切に連携できる体制があるかどうかも、業者選びの重要なポイントです。
専門業者との連携で、地域の不動産会社で断られてしまった借地権付き建物を早期に現金化できた、という例あります。短期間で売却できる可能性を高めるなら、専門家へご相談ください。
地主が売却を認めてくれない! 裁判所へ許可を求める法的手段

借地権付き建物の売却を検討する場合、不動産業者が買ってくれない、という問題だけでなく、地主が売却を認めてくれない、というトラブルが起きる場合があります。
泣き寝入りをして、地代の支払いを続けている、という借地人もいるのですが、地主が承諾してくれない場合に、裁判所へ許可を求める法的手段が実はあります。
地主による売却反対で諦めないための、借地権者主体で話を進める方法とプロセスを知っておきましょう。
売却を目指す手段の一つではありますが、許可の可否や承諾料額は個別事情に応じて判断されます。また、地主が介入権を行使して、第三者ではなく、地主側での買取になる場合もある点を覚えておくと安心です。
裁判所が地主に代わって許可を出す「借地非訟手続き」の流れ
地主が頑なに売却を認めない、法外な承諾料を提示されて話にならない、という場合、裁判所が地主に代わって許可を出す「借地非訟手続き」の申し立てをする、という方法があります。
借地非訟の申し立てをすると、裁判所が選任した専門家が間に入り、地主側の言い分も聞きながら、総合的に判断されます。裁判所は、譲受予定者の属性、資力、借地の利用状況、地主に不利となる恐れの有無、承諾料の相当性などを総合的に判断します。
適切な買主候補や資料を準備できれば、地主の承諾に代わる許可が認められる可能性がありますが、結論は個別事情により異なります。
借地非訟手続きを進める際は、借地権譲受予定者の住民票・登記事項証明・資力資料などが必要です。そのため、あらかじめ売却先を決めておくと、手続きをスムーズに進められます。
裁判所は地主と借地人、両者にとって良い結論を出すために、売却して良いという判断だけでなく「選んだ業者が買取をした場合、地主の不利にならないかどうか」という点を検討の上、売却の可否を判断します。
地主との交渉をお願いしたけれど売却を認めない、という場合は、借地権付き建物の買取に強い業者へ相談しながら、最終手段として借地非訟の申し立てを検討してみてください。
【借地非訟の手続きの主な流れ】

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買い手の選定
借地非訟の申し立ての前に、借地権付き建物を買い取ってくれる業者を探します。借地権物件をメインに扱う専門業者を選ぶと、買取の可能性が高まります。
買い手が決まっていない場合、地主にとって不利ではないかの判断ができず、申し立てが受理されない場合があります。
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裁判所への申し立て
売却先が決まったら、管轄の裁判所へ「借地非訟」の申し立てを行います。書類作成や円滑な話し合いのために、弁護士の力を借りると安心です。買取先の業者が、弁護士と提携している場合は、相談してみてください。
このタイミングで、買取先を知った地主が、その業者に売るくらいなら自分で買うと「介入権」を行使する場合があります。この場合は、介入権が優先されますが、次のステップで鑑定委員会によって算出された「相当の対価」での買取になるため、借地人側が不利にならない結果を目指せます。
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鑑定委員会による調査
裁判所が選んだ専門家(鑑定委員会)が、現在の土地の価値や適切な承諾料(譲渡承諾料)を調査して「相当の対価」を算出します。借地人は売却にあたり、現在の価値にたいして10%の承諾料を地主へ支払うのが一般的です。
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審理と決定
借地人と地主、双方の言い分も聞き、裁判所が総合的に審理し、決定を下します。買い手が反社会的勢力である、といった深刻な事情がない限り、適切な承諾料の支払いを条件に、売却の許可が出されます。
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借地権付き建物の売却
裁判所の決定を受けた後は、地主の承諾に代わる裁判所の許可を得て、借地権の譲渡が法的に有効となり、売却手続きを進められます。地主へ決定した承諾料を支払い、事前に選定した業者へ借地権付き建物を売却して、手続き完了です。
相続した借地権を放置するリスクと固定資産税・解体費用の現実
「近隣の不動産会社に、借地権付き建物の買取を拒否されてしまった」
「地主に買取をお願いしたいけれど、聞く耳を持たず、売却も認めてくれない」
このような状況に陥っている場合、「売れないから……」と建物を放置してしまいがちです。
借地権付き建物を放置した場合、3つのリスクが考えられます。
- 地代や固定資産税をその先もずっと支払う必要がある
- 「特定空き家」に指定されるケースがある
- 解体費用が高額になる場合がある
次に、想定されるリスクの詳細を、くわしく解説いたします。
終わらない「地代」と「固定資産税」の支払い
借地権付き建物は、土地は地主のものですが、建物は相続した借地人の財産です。誰も住んでいない状態であっても、地主へ支払う地代が発生します。固定資産税や都市計画税についても、建物にかかる部分は所有者課税のため、支払い義務が生じます。
都内近郊であれば、地代だけで年間数十万円になってしまうケースが珍しくありません。地代や税金の支払いで、生活を圧迫しないためにも、早期売却の検討が必要です。
「特定空き家」に指定される恐れがある
相続した借地権付き建物を放置してしまうと、特定空き家(管理が行き届いておらず、倒壊の危険や衛生上の問題があると、自治体から判断された空き家)に指定されたり、管理不全空家として勧告されたりする恐れがあります。
特定空き家や管理不全空家になると、住宅用地特例から除外される可能性があり、建物がさらに売りづらくなります。住宅用地特例から解除されると、土地にたいする軽減措置が外れ、固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍になる可能性があります。
借地権付き建物の場合、土地は地主の所有であるため、土地の固定資産税は地主に課税されます。借地人が直接負担するのは、建物の固定資産税のみとなりますが、地主側の税負担増加をきっかけに、地代増額交渉や契約関係のトラブルに発展する恐れがあります。
また、建物の所有者である借地人には、建物の固定資産税や管理責任が引き続き残ります。税金の負担を減らすなら、特定空き家に指定される前に、売却を目指しましょう。
「解体費用」が高額になる場合がある
相続した借地権を売却する場合、地主から更地にして返すようにと言われる場合があります。更地にする場合、業者が建物を解体するのですが、放置していた期間が長くなると、建物の老朽化が進んでしまいます。
その結果、手作業でなければ解体できない箇所が増え人件費がかさむ、建物が崩れて木や金属、プラスチック部分が混じり合い処分費が上がる、などの理由で解体費用が高額になる可能性があります。
このように「買ってくれないからどうしよう」と悩んでいる間に、借地人側のコストがどんどん上がってしまいます。地代や税金、解体費の負担、特定空き家になってしまうリスクを避けるためにも、借地権付き建物の買取に強い業者探しを急ぐ必要があります。
まとめ

相続した借地権付き建物が売れず、地主からは「更地にして返せ」と言われてしまった……そんな出口のない状況でも、解決の手立てはあります。建物が売れない構造的な理由を知り、専門家や法律の力を借りて、一般的な不動産業者で「買取が難しい」と言われた建物であっても、売却を目指せます。
将来の負担やリスクを減らすなら、地主との交渉に強い、専門業者への相談が解決の近道です。プロの力を借りれば、不動産や法律の知識を生かしながら、地主の気持ちに配慮しながら話を進められます。それでも難しい場合は、裁判所という法律の盾もあります。
新青土地コーポレーションは、これまでに多くの借地人、地主に寄り添い、「借地権・底地」の問題に向き合ってきました。「地主との折り合いが悪い」「複数の不動産会社で買い取りを断られた」という場合も、最善の方法をご提案いたします。
お問い合わせ・ご相談は無料です。現在の建物の状況、お悩みなど、お気軽にお聞かせください。
あなたの代で借地権付き建物の問題を解決し、心穏やかな毎日を取り戻せるように、借地権に強みを持つプロが、お力になります。
「売れない」と感じている借地権付き建物でも、専門家とのタッグで、売却の可能性を高められる場合があります。まずは建物の状況や借地契約の内容を確認し、現実的な出口戦略を一緒に検討してみましょう。

