「借地権を相続するときは、名義変更しないといけないんですか?」でもお伝えしましたが、不動産や預貯金と同様に借地権も相続の対象になります。そこで問題なのが、法定相続人が複数いるケースです。たとえば、亡くなった借地権者に子どもが3人いるようなときには注意する必要があります。
分割して相続できるが、トラブルになる可能性が高い!
借地権は、1名でも複数名義でも相続することが可能で、もちろん兄弟で分割して相続することもできます。ただし、複数人で借地権を相続すると、後々トラブルに発展するケースが非常に高いのでおすすめできません。その理由について、わかりやすくご説明します。
共有相続によるトラブルについて
亡くなられた方の遺言がない場合は、法定相続人で遺産分割協議を行い、故人の不動産や預金、株などの財産の分割方法を決定します。預金や株などは比較的分割しやすいですが、不動産や借地権などは分割するわけにはいきません。とくに借地権は地代や更新料の支払いなども発生するので、相続時に悩まれるケースが多くなっています。
そこで今回は、3人兄弟で借地権を共有相続した場合、実際にどのようなトラブルが発生するかをご紹介します。
◎相続人が増えればリスクも増える
「相続した家に住みたい」「借地権を売却して換金したい」「借家として家賃収入を得たい」など、相続人が複数になれば意見もさまざま。話し合いによって解決できればよいですが、それが原因で肉親同士の関係が悪化してしまうリスクを秘めています。
◎世代交代によって相続人が増えてしまう
最初は3人の兄弟で共有していた物件も、その中の1人が亡くなって家族などに相続されれば相続人が増えてしまいます。また、その間に親族間での関係性も変わってしまいますし、それぞれの主張が食い違ってしまうこともあります。このような世代交代によって相続が繰り返されることを「二次相続」と呼び、借地権トラブルの火種になります。
◎売却や建て替えに共有名義者全員の同意が必要
借地権を共有財産にした場合、売却や建て替えをするために共有名義者全員の同意が必要です。このときになかなか話し合いがまとまらず、建物の補修や建て替えが進まなかったら……。旧法借地権では、建物が朽廃(きゅうはい:建物がボロボロになること)すると、借地権が消滅することになっています。そう、権利を失ってしまうということです。
◎共有名義者全員、税金を支払う義務がある
当たり前ですが、共有名義者全員に固定資産税などの納税義務が発生します。その手間を省くために1人の名義に変更する場合は、それぞれに贈与税が発生します。また、名義変更ではなく売却するにしても、全員に譲渡所得税がかかってしまいます。
売却するときには地主の承諾も必要ですし、相続では不要だった承諾料の支払いも発生します。このようにさまざまな問題が起こる共有相続。後々のことまで考えるなら、遺産分割協議で単独相続することをおすすめします。
▽法定相続人とは?
民法では相続できる親族が規定され、それを「法定相続人」と呼びます。被相続人(借地人さん)の配偶者(妻や夫)は常に法定相続人となり、以下の親族も法定相続人となります。
① 被相続人の子ども
② ①が亡くなっている場合は、その子ども(孫)
③ ②が亡くなっている場合は、その子ども(ひ孫)
④ 子どもや孫がいない場合は、被相続人の父や母
⑤ ④が亡くなっている場合は、その父や母(祖父母)
⑥ 上記に該当しない場合は、被相続人の兄弟姉妹
⑦ ⑥が亡くなっている場合は、甥や姪
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