これまでのコラムで旧法借地権は、「一度貸したら戻ってこない権利」とご説明してきました。その理由は借地上に建物があるかぎり、借地権者は土地を利用し続けられるからです。しかし、実は旧法借地権にも権利が消滅する条件があります。
そこで今回は、「借地権の消滅って何?朽廃(きゅうはい)ってどんな状態ですか?」というご質問にお答えします。
旧法借地権でも権利が消滅する条件があります
旧法借地権では借地上に建物があるかぎり、半永久的に借地権者は土地を利用できます。また、契約内容によっては、契約期間を定めていないケースもあるため、地主が借地権を取り戻したいと思っても非常にむずかしいのが現状です。
しかし、旧借地法で契約期間が定められていない場合は、「建物の朽廃によって借地権の契約が終了する(借地法2条1項)」という取り決めがあります。この際、契約解除などの通知は不要です。とはいえ、実際は地主と借地権者の間で交渉するのが普通です。
ちなみに契約期間が定められている場合は、朽廃しても借地権が終了せず、契約期間満了まで権利が継続します。また新法では、旧法のように朽廃によって自動的に借地契約が終了する規定はありません。
朽廃とは、実際にどのような状態を指すの?
借地権で使われている「朽廃」という言葉。簡単にいうと、建物が老朽化してボロボロになるということです。このボロボロになったと判断する基準ですが、非常にむずかしいもの。ちなみにこれまでに、以下のような理由が朽廃として認められています。
・建物がいつ崩壊するかわからない危険な状態
・壁や柱、土台などが腐食して、修理に新築と変わらない大改築が必要
・長期間にわたって人が住んでおらず、新築と変わらない改築費が必要
一般的には自然に老朽化し、修繕に新築と変わらないくらいの金額や労力が必要な状態を朽廃と判断することが多いようです。逆にいえば、一般的な修繕で補修可能ならば朽廃とは認められないわけですね。
しかし、借地権者が実際に居住している場合、借地の明け渡しを要求することはむずかしいでしょう。実際の裁判所の判例からも、そのような事例はほとんどありません。朽廃の判断は非常にシビアなので、気になる方は不動産会社などに相談しましょう。
地震や火事のよる滅失では所有権は失われません
朽廃のほかに「滅失」という言葉もあります。こちらは火災や地震によって建物が大きく破損してしまったり、完全になくなってしまったりすることを指します。この滅失に関しては、借地権がなくなることはありません。また、朽廃では借地権自体がなくなるので新しく建物を建築することもできませんが、滅失の場合は建物を再建築することが認められています。その際に、地主は借地権者に承諾料を請求することができます。
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