借地権者が借地権を売却する場合、必ず地主に相談しなければいけません。その理由は介入権(借家借地法19条3項)により、「地主が優先的に借地権を買い取りできる」と定められているからです。簡単にいえば、借地権者が権利を売却するとき、必ず地主に相談し、買い取る意志があるか確認しなければいけないということです。
こちらでは、借地権者から「借地権付き物件を売りたい」と言われた場合の選択肢や対処法などをご紹介します。
地主には3つの選択肢があります
借地権者が売却によって権利を手放す場合、地主には3つの選択肢があります。
3つの選択肢
① 地主が借地権を買い取る ② 売却を承諾し、借地権者が第三者に権利を売る ③ 売却に承諾せず、第三者に権利を売ることを認めない |
借地権を取り戻せるチャンスです!
これまでにも説明してきましたが、借地権は一度貸してしまえば永久に戻ってこないものと考えられていました。その状況を改善するため、平成4年に施工されたのが借家借地借家法です。そして、地主にとって土地が戻ってこないというデメリットの解決策として、定期借地権が生まれたわけです。
そんな借地権が取り戻せる数少ないチャンス! 地主にとってもっともメリットがあるのは、①の「地主が借地権を買い取る」という選択肢です。借地権を買い戻すことで地主は土地を利用することもできますし、また別の方に貸すこともできます。買い戻すことで土地利用の幅が広がるというわけですね。
また、金融機関から借入をして、買い戻した借地(完全な所有権の土地)にアパートを建てて人に貸せば、地代より相当に高く貸せ、収益が上がるとともに負の財産を作ることにより、相続税対策になります。
借地権を買い戻すメリット
◎新しい借地権者を選べる
借地権者が第三者に借地権を売却する場合、地主は次の借地権者を選ぶことがなかなかできず、今までのようにいい借地権者が現れるとは限りません。しかし、一度買い戻すことで、地主さん自身が新しい借地権者を選ぶことができます。地主と借地権者は信頼関係第一ですから、ご自身で選びたいものですよね。
◎契約条件の見直しができる
借地権者が第三者に権利を売却する場合、一般的には同じ契約条件のまま売却されます。もともと旧法借地権で契約している場合は、そのまま旧法の契約内容が継続されるわけです。地主にとっては、借地権がなかなか帰ってこないとういう状況が続いてしまいます。しかし、一度買い戻すことで、契約内容を見直して新しい借地権者を探すことができます。このタイミングで旧法から新法の定期借地権に変更することも可能です。
◎一石3鳥以上の相続対策ができる
借地権を買い戻す際に金融機関から借入をし、買戻し完全に所有権に戻った土地にアパートを建て建物を貸すことで、地主にとっては一石3鳥以上のメリットがあります。
- 借地権者と地主という時代遅れの貸し借りが解消される。
- 負の財産を造ることで、他の資産と相殺し、全体の財産評価をさげ、相続税対策になること
- 土地を貸していても100坪でひと月50,000~80,000円程度の収入が、建物を貸すことで、ひと月1,000,000円以上になり、収入UPにつながる。
- 借地権負担付の土地(底地)のままだと、換金性に乏しかったが、完全な所有権になることで、換金性があがる。(借地を買い戻すのに費用はかかるが、もともとの底地部分の評価も上がる)など、、
もし、買い戻しもせず、売却にも承諾しなかったら?
借地権を買い戻す気はないけど、借地権者にはそのまま住んでいてほしい。そう考える地主もいらっしゃるかもしれません。その場合は、③の「売却に承諾せず、第三者に権利を売ることを認めない」という選択肢になります。
買い戻しや売却を拒否した場合、そのまま借地権者が住んでくれればよいですが、どうしても売却したい場合は借地権者が買い手を探し、借地権を売る許可を得るために裁判を行うことになります。このような手続きを「借地非訟(しゃくちひしょう)」と言います。
借地非訟を行ったうえで借地権を売却する場合、通常は不動産業者などが間に入って売却手続きをしたり、不動産業者が借地権を買い取って第三者に売却したりします。この場合、地主は新しい借地権者を選ぶことができず、契約条件の変更もむずかしいでしょう。
以上のことから、もし借地権者から「借地権を買い取ってほしい」という相談があれば、地主自らが買い戻すのが最良の選択肢というわけです。ご理解いただけたでしょうか?
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