来年が借地権の更新時期です。更新料に不安があり、借地権の売却を検討してます
事例の背景
山田さんは、都心の人気エリアにある10坪程の敷地に、築年数の古い(築59年)建物を所有しています。
その建物が建っている土地は約60年前から鈴木さんという地主から借地権という形で借りていました。
山田さんは来年に控えている借地契約更新時の更新料の支払いが不安なため、この借地権を誰かに売却したいと考えています。
借地権の現状
現在の借地契約は20年ごとの更新となっていますが、来年期間が満了するため、更新料の支払いが控えています。
敷地が小さいとは言え、都心の人気エリアなので当然評価も高く、多額な更新料を請求される可能性があります。
借地人は昨今の経済状況から収入が下がっており、更には蓄えもほぼ無いため、その更新料を支払う事が困難だと考えています。
売却時の不安
建物が古い。そのままで売れるのか
先々代が借地として借りた時に建てた建物で、築年数が59年も経っており、屋根からは雨漏りがしています。
このような状況でも誰かに売ることは出来るのでしょうか。
回答
建物の築年数が古い場合、住宅ローンでの借り入れが出来ない事がほとんどであるため、現在の建物を一般個人の方へ売却する事は難しいでしょう。
所有権の土地であれば、銀行が土地を担保(抵当権設定)にすることが出来るため、建替えを前提とした住宅ローンの借り入れは可能です。
しかし、借地権の場合は土地は地主の物ですから、借地権者が担保に出来るものが何もない(建物は壊す前提のため)ので、建替えを前提とした融資(住宅ローン)は借地権の場合は難しいでしょう。
このように建物が古く、一般個人の方が買う事が難しい場合は、不動産会社(建売会社)等が購入するケースが多いです。
建売会社等の不動産会社は借地権を建物が建っている状態のまま購入し、新築を建て、借地権付き新築戸建てとして一般の個人の方へ販売します。
こうする事によって、普通に住宅ローンが組めるようになり、一般個人の方も購入できるようになります。
譲渡承諾料はどれくらいになるのか。また、その支払いはどうすればよいか。
売却(譲渡)する時には承諾料がかかると聞きました。
どれくらいの金額になるのでしょうか?
また、今まとまったお金がないのですが、地主さんにはいつ支払う事になるのでしょうか?
回答
まず、第三者へ借地権を売却(譲渡)する時には、地主の譲渡承諾が必ず必要となります。(相続等の場合は不要な場合もある)
そして、その譲渡承諾をしてもらう際には承諾料が必要となるケースがほとんどです。
承諾料の計算方法は地主の考え方によって様々ですので、ここでは、いくつか例を挙げて説明します。
1.売れた金額(実勢価格)をベースとする(高い)
実際の売買金額をベースに決めるケースです。
借地権が第三者へ実際に売れた金額が承諾料を決めるベースの価格となり、その金額の10%(10%ではない事もあります)を承諾料として地主が請求するという事です。
この場合、売れた金額=実勢価格となるため、都心等の場所では下記の計算方法と比べ、一番高額となることが多いです。
また、下記で説明する金額と比較して、借地権者への負担が最も大きくなってしまう事から、売れた金額自体を調整してしまおうと考える方も出るほどです。
2.公示価格・基準地価格(中くらい)
公示価格には公示地価と基準地価の2つのタイプがあります。公示地価は国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日時点の価格を3月に発表し、全国2万6,000か所以上の「標準地」に基づいて決定されます。これに対して基準地価は、各都道府県が7月1日時点での価格を9月に発表し、全国2万か所以上の「基準地」を評価します。
この公示価格(基準地価格)を基に借地権の価格を計算し、その価格に対して10%(10%ではない事もあります)を承諾料として地主が請求するという事です。
借地非訟事件等の裁判手続きにおいて鑑定評価をする場合、この公示価格に近い価格が提示される事が多く、また、「1番の実勢価格」と「3番の相続税路線価格」の丁度中間位の価格になるため、両者(地主・借地人)の落としどころとして採用されるケースが多いです。
3.相続税路線価格(安い)
相続税路線価格は、相続税や贈与税の計算に使われる土地の評価基準で、毎年7月1日に発表されます。国税庁が定めるこの価格は、土地が所在する路線ごとに1平方メートルあたりの価格を示しており、その価格と隣接して借地権割合が表示されています。
今まで説明した中で唯一、借地権割合が表示されていることから、借地権の売買価格の目安とされる事が多く、また、地主によっては、この価格を基に各種承諾料を計算する事もあります。
ただ、上記1、2と比較して一番価格が安い事から、借地人としては承諾料が安価になるためこの価格を採用したい考えますが、借地人から地主に対しこの価格で交渉した場合、地主からは反発があるかもしれません。
双方の落としどころを探るという意味で、まずはこの価格を提示するという事であれば良いのではないでしょうか。
相続税路線価は、国税庁のウェブサイトで提供されている「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」を利用して調べることができます。
- 国税庁のウェブサイトにアクセス: 国税庁の公式サイトにアクセスし、「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」のセクションを探します。
- 地域を選択: 調べたい土地が位置する地域を選択します。
- 路線価図の確認: 選択した地域の路線価図を表示し、具体的な土地の位置を確認します。
- 路線価の読み取り: 路線価図上で指定された土地の路線価を確認します。
ここまで、借地権を譲渡する際の譲渡承諾料について説明しましたが、借地権を売却する時には、この他に、「建替え承諾」「期間変更承諾」「抵当権設定承諾」等の、様々なお願いを地主に対しする必要があります。
後出しで地主へお願い事をすると機嫌を損ねてしまう事もあるので、「お願い事はまとめて」するように心がけましょう。
承諾料の詳細はこちら→承諾料のページへ
借地期間があと1年しかない借地権を売却できるのか。
来年更新なので、借地契約の期間が残り1年しかありません。
1年しか残っていない借地権を買ってくれる人はいるのでしょうか?
回答
基本的には可能です。ただし、地主が承諾する場合に限ります。
期間変更をお願いし、購入者が取得するときには20年(非堅固の場合)の契約となるよう地主へお願いをしてみましょう。
地主が譲渡について承諾しない場合は売却は困難となります。
そんな場合でも、粘り強く、諦めずに交渉する事が必要です。
それでも承諾してくれない場合でもなすすべがないという訳ではありません。
地主の承諾に代わる許可を裁判所へ申し立てる事が出来ます。
地主さんに何と言えばよいのか。
ただ地代を払って住んでいただけなので、地主さんに何をどう話をしたらよいか分かりません。
回答
地主さんへのお願い事項は小出しにせず、まとめて一度にお話をするようにしましょう。
「これだけ(譲渡・建替・期間変更)の承諾をお願いします」→その内容を踏まえて地主は条件(承諾料)を決めます。
決めた後で、「更にこれもお願いします」と言うと、せっかく出した承諾料の前提が変わる訳ですから、地主はへそを曲げてしまいますし、最悪、譲渡を認めないという事にもなりかねません。
また、せっかく合意したのであれば、合意した内容は必ず書面に残しておくようにしましょう。
承諾料等の金額をを出してもらう際なども、口頭だけではく、書面を作成してもらうようお願いしましょう。
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