監修:司法書士あおい事務所 代表 司法書士 大谷 幸資
認知症への備えとして、任意後見と家族信託の二つがよく挙がります。一般的な解説は多くありますが、借地権や底地を持っている方は、借地契約や相手方との関係も踏まえて選ぶ必要があります。とくに賃借権型の借地権を家族信託に移す場合は、地主の承諾が重要な検討事項になります。
この記事では、二つの制度の違いを押さえたうえで、借地権・底地に固有の論点を整理します。以下の借地権の説明は、主に建物所有を目的とする土地の賃借権を対象とします。地上権は、譲渡に関するルールが異なります。
【制度改正について|2026年9月7日確認】
成年後見制度等を見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が、2026年6月24日に公布されました。成年後見関係の改正は、公布から2年6か月以内の政令で定める日に施行されます。本記事は改正法施行前の制度を中心に説明しています。施行後は、法定後見の類型の見直しや、一定の場合に任意後見監督人を選任せず家庭裁判所が直接監督する仕組みなどが導入されるため、手続き時の施行状況・経過措置を確認してください。
借地権・底地では、なぜ早めの備えが必要なのか

所有権の不動産でも、判断能力が低下すると、売却だけでなく、修繕、賃貸借の管理、資金調達などに支障が出ることがあります。管理が滞れば、資産価値に影響する可能性もあります。
借地権と底地では、こうした問題に加えて、地主・借地人の双方が関わる調整が必要になります。
借地人の側で必要な判断や手続きができなくなると、管理や売却が滞るおそれがあります。
- 建物が老朽化したとき、建替えや借地条件の変更、必要な承諾の交渉が進みにくくなります。借地権者が自己名義で登記された建物を所有することは、借地権の対抗要件の一つです(借地借家法10条1項)。単に建物が古くなっただけで直ちに対抗力を失うわけではありませんが、滅失・朽廃の影響は、旧法・現行法の別や契約内容を確認する必要があります。
- 更新手続や更新料の協議が難しくなることがあります。ただし、判断能力の低下だけで更新ができなくなるわけではなく、法定更新の成否は別に判断されます。更新料も、法律上当然に一律の支払義務があるものではありません。
- 借地権を売却する場合も、本人に必要な意思能力がなければ、適切な代理・支援の体制を整える必要があります。
- 地代の支払義務は続きます。滞納が続けば解除を主張されるおそれがありますが、解除の可否は滞納状況や信頼関係への影響などによって判断されます。
- 借地非訟手続(借地借家法17条・19条等)も、本人の判断能力の状態に応じて、法定代理人や弁護士等を通じて進める体制が必要になる場合があります。
地主の側で必要な判断や手続きができなくなった場合も、借地人に影響が及びます。
- 譲渡承諾や建替承諾の協議が停滞することがあります。ただし、借地非訟しか選択肢がないわけではありません。適法な権限を持つ後見人等や、あらかじめ信託を受けた受託者を通じて、合意を目指せる場合もあります。
- 底地の売却や地代改定の合意にも、適切な代理・管理の体制が必要になります。
- 相続によって底地が複数の相続人の共有になれば、売却などの合意形成に時間を要することもあります。
借地権と底地は、片方の手続きが滞ると、もう片方の活用にも影響が出やすい資産です。同時売却に、当事者本人双方の判断能力が常に必要というわけではなく、適切な権限を持つ代理人等を通じて実施できる場合もあります。それでも、体制を整える時間や手続きを見込み、早めに備えておく意味があります。
更新期間は、旧法・現行法の別や契約内容によって異なります。また、建替えや売却の機会が20年に一度と決まっているわけではありません。必要になったときに動けるよう、更新時期や建物の状態を確認し、事前に準備することが大切です。
法定後見では、後見人を家族だけで決められない
判断能力が不十分になったときに利用する制度が、法定後見制度です。現行制度には後見・保佐・補助の三つの類型があり、本人の状態や必要な支援に応じて家庭裁判所へ申し立てます。
成年後見人等を選ぶのは家庭裁判所です。親族を候補者として申し立てても、財産の内容や親族間の意見の相違などにより、弁護士・司法書士等が選ばれることがあります。現行の後見・保佐は、判断能力の回復等による取消しがない限り、原則として本人の死亡まで続きます。報酬が付与される場合には継続費用も生じますが、親族を含め全員に自動的に報酬が発生するわけではありません。
成年後見人は、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況に配慮して財産を管理します(民法858条)。財産の維持・保全だけが目的ではなく、本人の生活や介護のために売却・修繕等を行うこともあります。ただし、本人の利益に沿う必要があり、成年後見人が本人の居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要です(同法859条の3)。
こうした制度の特徴を踏まえ、契約内容を理解して意思を示せるうちに、任意後見や家族信託による備えを検討します。
任意後見とは

元気なうちに、将来自分の後見人になってもらう人をあらかじめ契約で決めておく制度です。
- 契約は公正証書でしなければなりません(任意後見契約に関する法律3条)。この点に例外はありません
- 現行制度では、任意後見人としての代理業務は契約締結だけでは開始しません。契約が登記されていることを前提に、判断能力が不十分になった段階で、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者等の法定の申立権者が家庭裁判所に申し立て、任意後見監督人が選任された時から開始します(任意後見契約に関する法律2条1号・4条1項)。本人以外の申立てでは、本人が意思表示できない場合を除き、原則として本人の同意が必要です(同条3項)。
- 現行制度では、任意後見監督人の選任が必要です。信頼できる子を任意後見人に指定していても、裁判所が選任する任意後見監督人の監督を受けます。改正法施行後の取扱いは、冒頭の制度改正の説明をご確認ください。
- 代理権の範囲内で、財産管理だけでなく、身上保護(身上監護)に関する入院・施設入所・介護サービス等の契約も代理できます。ただし、任意後見人になるだけで医療行為への同意権が生じるわけではなく、介護を自ら行う義務とも区別されます。
- 代理できる範囲は、契約に添付する代理権目録で定めます。不動産の売却や建替え等も、契約・代理権の範囲と本人の利益を踏まえて検討できます。成年後見人と異なり、任意後見人による居住用不動産の処分には、民法859条の3による家庭裁判所の許可は不要です。ただし、必要な代理権と契約上の制限を確認し、任意後見監督人にも相談します。
費用は、契約時の公証役場費用や専門家報酬に加え、現行制度では開始後の任意後見監督人への報酬を見込みます。大阪家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」(令和7年4月)では、通常の監督事務について、管理財産額5,000万円以下は月額1万〜2万円、5,000万円超は月額2万5,000〜3万円を目安としています。この資料でいう管理財産額は、預貯金・有価証券等の流動資産の合計額であり、不動産の評価額をそのまま加える趣旨ではありません。全国一律の料金表ではなく、実際の額は裁判所が事案に応じて決めます。任意後見人自身の報酬を契約で定めれば、それも別途必要です。継続期間と改正法施行後の監督の取扱いを含め、総額で比較してください。
家族信託とは
財産の持ち主(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分の権限を託し、その財産から得られる利益は本人(受益者)が受け取る、という仕組みです。親が委託者兼受益者、子が受託者という設計が典型です。
- 契約による信託は、原則として信託契約の締結によって効力が生じます(信託法4条1項)。停止条件や始期を付けることもできます(同条4項)。ただし、不動産の登記や必要な承諾、口座の準備など、実際に管理を始めるための手続きは別途必要です。
- 契約による家族信託では、公正証書の作成は法律上の一律の義務ではありません。ただし、金融機関が公正証書や契約案の事前審査を求めることがあるため、契約前に対応を確認します。

- 日常的な裁判所の監督や、信託監督人の設置が当然に必要となる制度ではありません。ただし、受託者には善管注意義務・忠実義務・分別管理義務等があり、受益者による監督や、信託監督人・受益者代理人を設ける仕組みもあります。
- 対象は、信託した財産と、その売却代金など法律・契約により信託財産に属する財産です。信託の対象にしなかった本人の財産や年金受給権等まで、自動的に管理できるわけではありません。任意後見も、代理権目録の範囲を超えて本人の財産を扱うことはできません。
- 受託者は、信託目的と契約で定めた権限の範囲内で、管理・運用・処分を行います。機動的に対応できる設計は可能ですが、家族のために自由に財産を使ってよいわけではなく、本人である受益者の利益や受託者の義務に従う必要があります。
- 家族信託そのものから、本人に代わって入院・施設入所の契約を結ぶ身上保護の代理権は生じません。一方、信託目的に従って、信託財産から本人の生活費・介護費等を支払う設計は可能です。
- 不動産を信託する場合は、受託者への所有権移転登記と信託登記等を行います。信託財産であることを第三者に対抗するための登記と、受託者の分別管理義務が関係します(信託法14条・34条、不動産登記法98条)。登記手続だけで、地主の承諾など別の問題が解決するわけではありません。
- 相続・承継の設計と組み合わせることもできます。受益者連続型信託では、本人の死亡後や、その次に受益権を取得する者を定めることができますが、信託法91条の期間制限があります。信託から30年が経過した後に指定により受益権を取得した受益者について、その死亡又は受益権の消滅まで等の限界があり、無期限に数世代先まで指定できる制度ではありません。遺留分や課税関係も含め、専門家による設計が必要です。
費用は、契約設計の専門家報酬、公正証書を作る場合の費用、不動産の登記費用・登録免許税などで構成されます。任意後見より初期費用が大きくなることもありますが、一律ではありません。家族信託にも、受託者・信託監督人等の報酬、帳簿作成・税務申告・専門家による支援、変更・終了時の手続きなどの継続費用が生じる場合があります。「初期費用だけ」「長期間なら必ず安い」とは考えず、必要な管理体制と総額を比べてください。
比較

| 比較項目 | 任意後見 | 家族信託 |
|---|---|---|
| 開始の時期 | 現行制度では判断能力低下後、家裁が任意後見監督人を選任した時 | 原則として契約締結時。条件・始期を付けることも可能 |
| 契約の形式 | 公正証書が必要 | 契約による信託では公正証書は一律の法的義務ではない |
| 監督の仕組み | 現行制度では任意後見監督人が必要。改正法施行後に変更あり | 定期的な公的監督は原則なし。信託監督人等を設けることは可能 |
| 管理する財産 | 代理権目録の範囲内の本人財産 | 信託財産とその売却代金等 |
| 売却・建替え等 | 代理権・契約と本人の利益に従って検討可能 | 信託目的・権限と受託者の義務に従って検討可能 |
| 生活・介護の契約 | 代理権目録の範囲内で代理可能 | 信託そのものに身上保護の代理権はない |
| 費用 | 契約・公証費用等に加え、監督人等の報酬を考慮 | 契約・登記費用等に加え、管理・監督・税務等の継続費用も考慮 |
| 本人の死亡後 | 任意後見は終了。相続・死後事務は別途検討 | 契約により終了・承継を設計。受益者連続型には期間制限等あり |
| 任せる相手 | 家族・知人・専門家等から選択 | 家族等の適任者。営業としての受託には信託業法上の規制あり |
借地権・底地に固有の三つの論点
ここからは、借地関係のある不動産で、とくに確認しておきたい点を整理します。
一.借地権の信託では、地主の承諾を確認する
賃借権型の借地権では、賃借権の譲渡・転貸に賃貸人の承諾が必要です(民法612条1項)。無断で第三者に使用収益させれば解除の問題が生じますが、判例上、背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除が制限されます。「承諾が必要か」と「無断の場合に解除できるか」は、分けて考える必要があります。
借地権や借地上の建物を家族信託の対象にすると、受託者への権利移転が問題になります。建物だけでなく、その敷地である土地の賃借権をどのように引き継ぐのかも、一体として整理する必要があります。地主から見れば、借地人や建物の登記名義が変わる可能性があるためです。
親が受益者のままであることだけを理由に、地主の承諾は不要、又は必ず解除されないと判断することはできません。信託の内容、占有・利用の実態、賃貸借契約との関係を確認し、移転前に地主の承諾を得る方向で調整することが重要です。個別の家族信託に関する解除の可否は、弁護士への確認が必要です。

借地権の対抗要件にも注意が必要です。借地権者名義の登記された建物の所有は、対抗要件の一つです(借地借家法10条1項)。建物と借地権の帰属、受託者名義の登記を整合させる必要があり、名義を変えただけで地主の承諾や借地権の承継が当然に認められるわけではありません。
信託による権利移転・登記を実行する前に、承諾の要否と条件を整理し、必要な承諾は書面で得ておきます。承諾料を求められる可能性はありますが、家族信託なら必ず一定額を支払うという法律上の一律のルールはありません。契約内容や合意によって判断します。将来の受託者交代や、信託終了時に誰へ権利を戻すかについても、承諾書・契約との整合を確認してください。
承諾が得られない場合は、借地権の信託を無理に進めず、任意後見を含む別の方法を比較します。借地借家法19条は、借地上の建物の第三者への譲渡等を前提とする承諾代替許可の制度ですが、信託による移転にそのまま利用できると断定はできません。個別の適用可能性・裁判例・費用について、借地非訟に詳しい弁護士に確認する必要があります。なお、任意後見契約を結ぶこと自体は借地権の譲渡ではありませんが、任意後見人が将来第三者に売却する場合の地主承諾は別途問題になります。
平成4年8月1日より前に設定された、いわゆる旧法借地権でも、現在新たに申し立てる譲渡許可については、借地借家法19条が適用されます。借地借家法附則4条は原則として既存の関係にも適用する一方、更新については附則6条等により従前の例によるとしています。「旧法借地権だから、譲渡許可も一律に旧借地法9条の2による」とは整理しません。
二.底地は信託に載せやすい ― 地主と借地人で条件が違う
底地は所有権ですから、事情が変わります。
対抗要件を備えた賃貸借では、原則として、所有権の移転に伴って賃貸人の地位も移転します(民法605条の2第1項)。この場合、賃借人の承諾は必要ありません。借地権者が自己名義で登記された建物を所有していることは、対抗要件を満たす方法の一つです(借地借家法10条1項)。底地の信託も、このような前提や契約内容を確認したうえで進めます。

賃貸人の地位の移転を賃借人に対抗するには、所有権移転登記が必要です(民法605条の2第3項)。信託登記もあわせて行い、地主名義・管理担当者・地代の支払先などを借地人に通知します。振込先が変わる場合は、変更日と新しい口座を明確に伝えることが重要です。
借地人側の賃借権移転と比べると、底地の信託では、借地人の承諾が法律上不要となる場面が多いという違いがあります。複数の底地について地代収受や将来の売却を引き継ぐ方法として検討できますが、受託者の権限は信託目的・契約に従います。地代改定や更新条件など、借地人との合意が必要な事項まで一方的に決められるわけではありません。
三.任意後見を選ぶなら、代理権目録の作り込みが結果を分ける
任意後見人が代理できるのは、契約に添付する代理権目録に書かれた事項に限られます。
公証役場の標準的な代理権目録でも、財産の管理・処分等を広く定めることはできます。ただし、借地関係で実際に必要となる行為を洗い出し、必要な権限が含まれるか、制限条項と矛盾しないかを具体的に確認しておくことが大切です。

- 借地権の譲渡と、これに伴う地主との交渉
- 契約・合意等に基づく譲渡承諾料・建替承諾料・更新料の支払い
- 借地条件の変更、増改築の承諾に関する交渉
- 借地非訟等に関する弁護士への依頼・委任と、必要な費用の支払い
- 地代改定の協議
- 建物の解体や、滅失登記等の専門家への依頼・手配
代理権目録に含まれない行為を、任意後見監督人の承認だけで追加することはできません。また、目録に「借地非訟の申立て・追行」と記載しても、裁判手続の代理資格の制限がなくなるわけではありません。借地非訟の手続代理人は弁護士が原則です(借地借家法44条。裁判所の許可等の例外があります)。任意後見人が弁護士へ依頼・委任できる権限も含め、公証人・弁護士等と確認してください。
どちらが向くか ― 借地権・底地の類型別
家族信託が向きやすいケース
- 底地を複数所有していて、地代管理と将来の売却まで任せたい
- 借地上にアパートなどの収益物件があり、修繕や建替えの判断を継続的に引き継ぎたい(賃借権型では地主の承諾等を確認)
- 裁判所による日常的な監督とは別に、契約に基づく管理・監督の仕組みを整えたい
- 法律上の期間制限や遺留分・税務を踏まえ、次の受益者や承継先をあらかじめ定めたい
- 財産を託せる家族等がいて、継続的な管理・報告や後継受託者の体制を整えられる
任意後見が向きやすいケース
- 借地権は自宅一件のみで、ほかの財産は預貯金中心
- 入院・施設入所など、身上保護に関する契約の代理も備えたい
- 地主の承諾が得られる見込みが薄い
- 公的な監督のある仕組みに安心感を求める(改正法施行後の取扱いも確認)
- 財産を託せる家族がいない
任せられる人の有無は重要ですが、家族以外の受託者が法律上一律に禁止されているわけではありません。一方、信託の引受けを営業として行うには、信託業法上の免許・登録等が問題となります(信託業法2条・3条・7条等)。弁護士・司法書士の資格だけで信託業を営めるわけではありません。司法書士会のガイドラインでも、受託者への就任と、契約・登記の支援や信託監督人等への就任は区別されています。
家族に適任者がいなければ、専門家を任意後見人とする方法のほか、信託銀行・信託会社の商品や引受けの可否を確認する方法もあります。ただし、借地権・底地を扱うか、どのような条件・費用になるかは各機関によって異なり、必ず利用できるとは限りません。
組み合わせるケース
財産管理を家族信託、身上保護や信託しなかった財産の管理を任意後見で補う設計もあります。ただし、同じ子が受託者と任意後見人を兼ねる場合などは、本人の受益者としての権利行使と受託者の立場が対立するおそれがあり、利益相反への配慮が必要です。信託外の財産の承継に遺言を併用する場合も、信託契約と内容を整合させます。
正直に申し上げておくこと
家族信託は万能ではありません。日常的な第三者の監督を置かなければ、不適切な管理が発見されにくくなるおそれがあります。ただし、「不正を止める仕組みがない」わけではありません。信託法には、受託者への報告請求、損失の填補、違法な行為の差止め、解任等の制度があり(36条・40条・44条・58条等)、信託監督人や受益者代理人を置くこともできます。本人の判断能力が低下した後も、誰がチェックし、権利を行使できるのかまで設計することが重要です。
借地権の信託では、信託契約だけでなく、地主の承諾、登記、借地契約との整合、金融機関の取扱いをまとめて確認する必要があります。融資や担保がある場合は金融機関と調整し、税務上の取扱いも税理士に確認してください。「信託契約を作れば、すべて解決する」とは考えないことが大切です。
本人が契約を結ぶには、その内容と結果を理解して意思を示せることが必要です(民法3条の2)。認知症の診断名や物忘れの有無だけで、一律に契約できる・できないと決まるわけではありません。契約内容に応じた意思能力を個別に確認します。必要な意思能力を失った後に、本人の契約による任意後見・家族信託を新たに組むことは難しくなるため、余裕を持って相談してください。
あわせて確認していただきたいこと
認知症対策とは別に、借地権をお持ちの方には、いま一度確認していただきたいことがあります。
相続が起きた後、誰が借地権を承継したか、地主に伝えていますか。契約書や建物の登記名義との整合は取れていますか。相続による借地権の承継は、通常の第三者への譲渡とは異なり、原則として地主の承諾を要しません。
当社が扱った案件では、借地人が亡くなってから十数年、地主が相続の事実を知らないまま経過していたケースがありました。売却の交渉を始める際、地主側の代理人から出生から死亡までの戸籍謄本一式と遺産分割協議書の原本提示を求められ、書類を揃えるだけで一か月以上を要しました。相続人や承継先の確認は重要ですが、必要資料は相続の内容によって異なります。法定相続情報一覧図の利用、写しの提出、原本の確認方法などは、相手方と相談して整理します。

信託や任意後見の設計に入る前に、現状の権利関係を確認し、未了の相続手続きを整理しておきます。借地上の建物や底地の所有権を相続した場合には、相続登記の申請義務にも注意が必要です。原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請します。令和6年4月1日より前に取得を知っていた未登記の不動産は、原則として令和9年3月31日までの対応が必要です。地主への通知・契約名義の整理と、法務局で行う登記は別の手続きです。
ご相談ください
当社は、借地権・底地の評価、契約や権利関係の整理、将来の売却を見据えた不動産面の検討・調整を担当します。任意後見・信託契約の法的な設計や手続きは、内容に応じて司法書士・弁護士・公証人等と連携し、税務は税理士に確認します。紛争性のある交渉や裁判手続など、弁護士による対応が必要な事項は、弁護士への相談をご案内します。
「借地権を持っているが、親が高齢で先が不安」「底地を複数持っていて、子に引き継ぐ方法を考えたい」「地主が高齢で、交渉相手がいなくなりそう」――そうしたご相談を承っています。
借地契約書と登記事項証明書をお持ちいただければ、不動産の状況を整理し、取り得る対応と必要な準備をご説明します。初回のご相談は無料です。
株式会社新青土地コーポレーション
〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-26-16
TEL 03-5307-7555
宅地建物取引士/公認不動産コンサルティングマスター/相続対策専門士
一般不動産投資顧問業 国土交通大臣(一般)第1376号
※本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。任意後見・信託の契約設計、意思能力、地主承諾や裁判手続の可否は、弁護士・司法書士・公証人等に、課税関係は税理士にご相談ください。費用は事案・財産・契約内容により異なります。成年後見制度の改正に伴う施行日・経過措置を含め、実際に手続きを行う時点の制度を確認してください。
主な参照資料
確認日:2026年9月7日。法令は適用時点の施行状況と経過措置を確認してください。
法務省・参議院|民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号) / 法務省|民法等の一部を改正する法律の概要
e-Gov法令検索|民法 / e-Gov法令検索|借地借家法 / e-Gov法令検索|任意後見契約に関する法律 / e-Gov法令検索|信託法 / e-Gov法令検索|信託業法
千葉家庭裁判所|よくある質問(任意後見編) / 大阪家庭裁判所|成年後見人等の報酬額のめやす(令和7年4月)
日本司法書士会連合会|民事信託支援業務の執務ガイドライン(令和6年11月)
東京地方裁判所|第1 借地非訟とは / 東京地方裁判所|第2 借地非訟事件手続の流れ

