この事例のポイント
- 昭和10年頃から続く借地で、借地契約書が存在しない。敷地内には築80年超の貸家4棟、うち1棟は入居中
- 当初は建売業者への売却を計画したが、地主様側の事情で譲渡承諾を得る見通しが立たなくなった
- 借地非訟も検討したが、契約書がないため「借地権があることの確認」から争う必要があり、数年単位の見込み
- 当社が「承諾が得られなくても決済する」条件で買い取り、入居者の立退きから決済まで約4か月半で完了
物件の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在 | 埼玉県 |
| 借地面積 | 約370㎡(約112坪) |
| 建物 | 木造平家建の貸家4棟(昭和10年〜30年頃築、登記あり)。うち1棟に入居者あり |
| 借地契約 | 旧借地法の借地(非堅固建物所有目的)。契約書なし・期間不明で法定更新中 |
| ご相談者 | 借地権者(お母様)のご子息 |
| 最終的な解決 | 当社による借地権の買取り |
| 期間 | 2023年4月 お問い合わせ → 2023年11月 売買契約 → 2024年4月 決済 |
※個人が特定されないよう、一部の情報をぼかして掲載しています。
ご相談のきっかけ:「古い貸家ごと借地権を売りたい」
2023年4月、当社ホームページからお問い合わせをいただきました。
「借地に昭和10年築の古い貸家が4棟あり、1棟は入居中です。借地権の売却を考えています。入居者とは立ち退きの話をしているところで、地主にはまだ何も話していません」
借地権者はお母様で、実務はご子息が担当されていました。貸家はいずれも老朽化が進み、賃料収入に対して修繕や地代・固定資産税の負担が重くなっていたことが、売却を考えたきっかけです。

最初の調査で分かったこと
当社で登記簿・公図・路線価・近隣の成約事例を調べ、地主様へのヒアリングも行いました。
- 借地契約書が見つからない 借地関係は昭和10年前後から続いており、契約書は地主様・借地人様どちらの手元にも残っていませんでした。借地権の存在を示す資料は、建物の登記と地代の振込記録(通帳)が中心です
- 建物の登記はある 借地権そのものの登記がなくても、借地上に借地権者名義の登記建物があれば、借地権を第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。この点は売却の前提として重要でした
- 入居者がいる 貸家1棟に賃借人がいるため、売却するためには立退きの合意が必要でした

当初の計画:建売業者への売却
最初に検討したのは、地主様から譲渡承諾を得たうえで、建売業者などの第三者に売却する方法です。約112坪の敷地を分割し、敷地内に道路(位置指定道路)を通して戸建5棟程度を建てる、あるいはアパートを建てる計画で、複数の建築会社からプランと見積もりを取りました。
この方法で試算した借地人様の手取りは、次のとおりです(金額は仮定※)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 想定売却価格 | 約4,700万円 |
| 地主様への承諾料(譲渡・建替え・抵当権設定) | 約900万円 |
| 期間延長料 | 約330万円 |
| 測量費・解体費 | 約350万円 |
| 仲介手数料など | 約200万円 |
| 譲渡所得税(概算) | 約500万円 |
| 手取り見込み | 約2,400万円 |
ただし、この試算は地主様から承諾が得られることが前提です。
壁:地主様の承諾が得られない
交渉を進める中で、地主様側のご事情により、借地権の譲渡について正式な承諾をいただくための手続きが進められないことが分かりました。地主様のご家族とも何度も話し合いましたが、最終的に承諾を得る見通しは立ちませんでした。
地主の承諾がないまま第三者に借地権を売ると、地主は借地契約を解除できる可能性があります(民法612条)。そのため、承諾のない借地権を買う第三者は、まずいません。

借地非訟という選択肢と、その現実
地主が承諾しない場合、借地人は裁判所に「地主の承諾に代わる許可」を求めることができます(借地借家法19条、借地非訟)。ただ、このケースでは次の問題がありました。
- 契約書がない 借地非訟の前に、そもそも借地権があること(契約の内容・範囲)を確定させる必要があり、借地権確認の訴訟から始めなければならない可能性がありました
- 時間がかかる 訴訟と非訟を合わせると、数年単位になる見込みでした
- 費用と減額 弁護士費用に加え、裁判所が許可する場合も承諾料相当額の支払いを命じられるのが一般的です。さらに、手続き中の物件は業者が買い取りにくく、売却価格も下がりやすくなります
借地非訟を前提に試算すると、借地人様の手取りは約700万円※まで下がる見込みでした。承諾料相当額・弁護士費用・解体費などを差し引くと、当初計画の3分の1以下です。しかも、許可が必ず出るとは限りません。

解決策:当社が「承諾がなくても決済する」条件で買い取る
そこで当社から、当社が買主となって借地権を買い取る方法をご提案しました。ポイントは次の条件です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡承諾 | 当社の責任と負担で地主様と協議する。承諾が得られなくても残代金を支払う |
| 承諾料 | 買主(当社)負担 |
| 建物 | 現況のまま引渡し(室内の残置物は撤去)。建物の契約不適合責任は免責 |
| 入居者 | 立退き完了後に決済 |
手取り額で比べると、借地非訟を前提にした場合(約700万円※)を上回り、しかも時間と結果の不確実さを借地人様が負わずに済みます。当初計画の試算には届きませんが、それは承諾が得られる前提の数字でした。この差をご家族で検討いただき、2023年11月に売買契約を締結しました。

入居者の立退き
貸家1棟の賃借人様とは、当社がご相談者と共に話し合いを進めました。
- 退去時期に応じて金額が分かる「明渡し協力金の計算書」を作り、いつ退去するといくら受け取れるかを具体的にお示ししました(早く退去するほど協力金が増える)
- 転居先の候補となる近隣の賃貸物件も探してご紹介しました
- 協力金は合意時と明渡し時の2回に分けて支払い、期限までに明け渡した場合に満額となる形にしました
2024年3月に合意書を交わし、同月末に明渡しが完了しました。立退きの時期に合わせて、決済日は当初予定から約1か月延ばしています。

決済とその後
2024年4月に決済し、借地人様は借地権を現金化されました。お母様がご遠方にお住まいだったため、契約・決済ともご子息が委任状で代理され、代金はお母様名義の口座へお振込みしています。
当社は取得後に建物4棟を解体し、解体した後も引き続き地主様と協議を重ねました。最終的には地主様が借地権を買い戻す形で合意し(買戻し価格:3,000万円※)、この土地の借地関係は解消されています。
地主様にとっては、約112坪の土地が借地の付かない完全な所有権に戻り、将来の活用や相続の選択肢が広がる結果となりました。借地権者から直接の譲渡が難しい場面でも、間に入る者がリスクを引き受けることで、地主様による買戻しという出口が開けることがあります。

この事例から言えること
1. 借地契約書がなくても、借地権はなくならない
契約書がなくても、長年の地代の支払いと登記された建物があれば、借地権は認められる可能性が高いといえます。ただし、売却や裁判の場面では「内容を証明できない」ことが大きなハンデになります。地代の振込記録や領収書は必ず保管しておいてください。
2. 「承諾が得られる前提」の査定額はあくまで目安
借地権の査定額の多くは、地主の承諾が得られることを前提にしています。承諾が見込めない場合、実際に手元に残る金額は大きく変わります。複数の出口(第三者売却・借地非訟・業者買取り・地主への売却など)で手取りを比べることが大切です。
3. 借地非訟は万能ではない
地主が承諾しなくても裁判所の許可で売却できる制度はありますが、時間・費用がかかり、許可が出る保証もありません。特に契約書がない借地では、手続きの入口で時間を取られる場合があります。
4. 入居者がいる場合は早めに動く
貸家付きの借地を売る場合、立退きの交渉が決済時期を左右します。協力金の額だけでなく、退去時期ごとの金額を見える形で示すと、話し合いが進みやすくなります。

借地権の売却でお困りの方へ
借地権は、地主との関係、契約書の条項、相続の状況、過去の紛争の有無によって、取るべき手順がまったく変わります。同じ「借地権を売りたい」というご相談でも、第三者への売却を目指すのか、地主買取を引き出すのか、借地非訟まで視野に入れるのかで、最初に作るべき書面が異なります。
過去に地主と揉めたことがある、訴訟をしたことがある、相続してから名義を触っていない ― そうした事情がある借地権ほど、手順の設計が結果を左右します。
契約書と登記事項証明書をお持ちいただければ、想定される手取りと、そこに至るまでの手順をご説明いたします。初回のご相談は無料です。
株式会社新青土地コーポレーション
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TEL 03-5307-7555
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宅地建物取引士/公認不動産コンサルティングマスター/相続対策専門士 国土交通大臣(一般)第1376号
※本事例は実際にお取り扱いした案件をもとに、ご相談者および関係者が特定されないよう内容を調整して掲載しています。記事中の金額(※印)は説明のための仮定の金額であり、実際の取引金額とは異なります。記載の手順・水準はあくまで本件における結果であり、同様の結果をお約束するものではありません。
